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ナルバンディアンを知る:究極のダブルスプレーでアルゼンチンに一勝

December 3, 2011

ナルバンディアンのダブルスは感動的でした。彼は今年はダブルスは一度プレーしたのみ。しかもそのときのパートナーはロディックでクウィーンズクラブで初戦敗退。ペアリングが悪かったのと、相手がデルポトロとステパネックでは負けて当然ですが、しかしナルバンディアンがこんなにダブルスがうまいとは!

アルゼンチン(ナルバンディアン/シュワンク) def スペイン(ロペス/ベルダスコ): 6-4 6-2 6-3

Photo: Getty Images: パートナーのシュワンクとハイファイヴをするナルバンディアン

スペインのFロペスとベルダスコはホームゲームで緊張しきってエラーの連続でした。しかし緊張しなくてもアルゼンチンチームに敗退していたと思います。その最も大きな理由はナルバンディアンの洗練された高度なダブルスプレーです。

ダブルスは攻める範囲が狭く、確実なショットメイキングと賢明なショットの選択をしなければなりません。そしてパートナーのテニスを熟知し、お互いのパーフォーマンスを高めるチームワークが必要です。

ヴァラエティーに富んだショットの引き出しの多いナルバンディアンのような選手が相手では、いくらダブルスペアを何年も組んだ気心の知れたロペスとベルダスコでも勝ち目はありませんでした。スペインチームは確率の低いシングルスプレーヤーのテニス。ダブルス専門のシュワンクとテニスIQの高いナルバンディアンの奥の深いダブルスの差がはっきりと出た実に面白い試合でした。

ナルバンディアンのダブルス

読者の皆さんのほとんどがダブルスをされると思いますが、ナルバンディアンのプレーをぜひみていただきたいのです。ダブルスはシングルスと違ってパワーでは勝てません。あらゆるショットを駆使できる高い技術を必要とします。狭いスペースに確実に落とせるプレースメントの技術が必要です。

ナルバンディアンはストロークだけでなく、卓越したヴォレーをみせてくれました。解説者のギメルストブがsmooth like silkとナルバンディアンのタッチのすばらしさをたたえていましたが、ヴォレーはまさにシルクのようにスムーズなタッチ。

まるでダブルスの専門家のようにゲームを知り尽くした動きとショットの選択は目を見張るものがあります。ナルバンディアンのサーヴはパワーではなくプレースメントです。リターンもきわどいアレーに。ダイナミックなストロークとシルクのようなタッチヴォレー。そして重要なポイントは逃がさない。

何ページにもわたっていかに彼のダブルスがすばらしかったを書くことができますが、最も大切なのは、彼のプレーの柔軟さです。パートナーのシュワンクとは3年前に一度ペアを組んだだけ。なぜこんなにダブルスがうまいのか?

実はナルバンディアンは2009年以降ダブルスをほとんどプレーしていませんが、2008年には12度もトーナメントに出場しています。しかもジュニア時代は1999年にコリアと組んでウィンブルドンのダブルスに優勝していますので、かなりダブルスを若い頃から鍛えているのがわかります。しかしダブルス選手ではありませんので、毎回パートナーが違っていました。ですからパートナーと合わせられる柔軟性をもった選手と言えます。

Felando (Feli はフェリシアーノ・ロペスのニックネーム:Nandoはフェルナンド・ベルダスコのニックネーム)と呼ばれるスペインのデ杯ダブルスチームは、ベルダスコが足を引っ張りました。彼はダブルスには向かない選手でパワーで勝負をしてきます。しかも最も大切な技術であるヴォレーが苦手。これではいくらストロークがよくてもダブルスでは勝てません。

ナルバンディアンは最もポテンシャルを発揮していない選手

Nalby(ナルバンディアンのニックネーム)は来年の1月1日に30歳になります。フェデラーとジュニア時代にNo.1を争ってきたライヴァルで、フェデラーが最も苦手とした選手の一人。才能のレベルではフェデラーに劣らず天才的なものがあり、オールラウンダーでGSのタイトルをいつとってもおかしくない選手だったのですが、フェデラーと違ってディシプリンに欠け(この点はサフィンに似ています)、「せっかく才能があるのに・・・」と惜しまれてきた代表選手でもあります。

センセーションを起こした2002年のウィンブルドン

私が最初ナルビーに強い印象を受けたのは2002年のウィンブルドンです。ウィンブルドンに初めて出場したにもかかわらず、あっという間に決勝へ。ボリス・ベッカーを彷彿させるセンセーショナルなデビューで思わず興奮してしまいました。

マッケンローが解説者でしたが、決勝前にナルビーを放送ブースに呼びました。とてもチャーミングで、スペイン語系の選手は英語が苦手なのに達者な英語でまたびっくり。残念ながらヒューイットに優勝をもっていかれましたが、あのときのナルビーは20歳。ポニーテールではありませんでしたが、波打つ髪が美しく、とてもすがすがしい印象を受けたことを覚えています。

しかしウィンブルドン以降はなかなかタイトルをとれず、決勝まで行っては優勝を逃がしてしまうナルビーの惜敗のパターンが続きました。ナルビーの最大の敵は注意が散漫してしまうこと。多趣味でも有名で、釣りをはじめ、バンジージャンプ、カーラリーなど、いろんなことをやっていないとテニスだけでは燃え尽きてしまうタイプ。メンタルに欠けると言われ始めたのもこの頃です。

補欠でマスターズカップに出場し優勝してしまった2005年

ナルビーが2度目のセンセーションを起こしたのは、2005年の最後のトーナメント上海マスターズカップでした。ロディックが腰の故障のために突然棄権。釣りの旅行に出かける寸前だったナルビーに連絡が入り、釣り道具をラケットにかえて急遽上海に。

ラウンドロビンの初戦にフェデラーに負けたものの、決勝戦でフェデラーを倒して優勝。アルゼンチン人で優勝したのはビラスについで二人目。GSやマスターズのタイトルを持たない選手が優勝したのはナルビーが初めてという快挙を成し遂げました。

フェデラーとナダルを破った2007年

ナルビーは25歳。テニス年齢でいうとピークの年齢です。2006年はエストリルで優勝したものの、6回も準決勝に進出しながらメジャーなタイトルがとれませんでしたが、ランキングは最高の3位へ。しかし2007年の前半は膝と腰の慢性の故障を抱えてしまい勝てない時期を過ごしてきました。

ナルビーを変えたのは後半のUSオープンのフェレール戦だったと元コーチのJaiteが語っています。死闘の5セットで惜敗してしまったナルビーですが、4時間近い激戦を戦い抜ける強靭なメンタルがそなわってきたのです。マドリッドのマスターズで1位のフェデラーを、パリのマスターズで2位のナダルを破り見事連続優勝を成し遂げたのです。

腰の手術で長期の欠場の2009年:膝の故障の2010年

慢性の腰の手術を決意したナルビーは、2009年5月のエストリルを最後に長期欠場。しかも翌年の2010年前半に膝を痛めてしまい、なかなかカムバックも思い通りにいかない苦しい一年を過ごしました。しかし徐々に試合感覚を戻し、減量したナルビーはフォットワークも軽くなり、8月のワシントンでやっと優勝。しかしこの優勝が最後でそれ以降はタイトルが取れていません。

メンタルに欠ける選手と呼ばれ続けたナルビー

まだメジャーのタイトルがとれないナルビーは、「才能を無駄にしている選手」と呼ばれ続けた理由に、身体の故障だけでなく「メンタルの欠如」があげられます。

自信があると僕は誰にでも勝てると思っている。でもメンタル的に疲れてしまえば、僕のレベルは落ちてしまう。

強靭なメンタルは強固な信念と献身的な努力から生まれるもので、「テニスだけが人生ではない。僕は人生を楽しみたい」と主張する選手は、ジョコヴィッチやナダルのように、遊びと仕事のメリハリをつけられる鉄のような意思の強さとディシプリンを持たなければなりません。

ナルビーがメジャーで勝てなくなってきている原因は他にもあります。パワーテニスができないこと。そして選手のフィットネスレベルが上がってきているために、スタミナに欠けるナルビーは長期戦ができないこと。

しかし彼のような華麗なテニスをする選手は数少なく、フェデラーと共にあと数年で消えていくのかと思うと、テニスの国宝を失うような寂しい気持ちになります。しかし、これほどダブルスがうまいのなら、ダブルスの選手生命は30歳後半ですので、マッケンローのようにダブルスで活躍してほしいと願っているのですが・・・

(追記)

ナルバンディアンがダブルスの勝利の後、記者会見の質問に対して面白いジョークをとばしました。

記者:私はスペインの記者ですが、明日のラバー4でナダルと対戦したいですか?それとも全くしたいとは思わない?

ナルバンディアン:すべての5マッチ(デ杯は5試合)に出たいのだが、残念ながらルールが許さないんだ。

アスリートであればできるだけ出場して母国に貢献したいと願うのは当然のこと。こういう質問はしてほしくないとナルビーは言いたかったのです。なかなかチクリとくる刺のユーモアがあっていい答えですね。ますます惚れ直しました。(記者さん、アホな質問はしないでいただきたい。)

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