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フェデラーのヴァヴリンカ批判の真相を探る

February 13, 2012 (更新)

アメリカチームに5連敗してしまったスイスチームは、フェデラーのヴァヴリンカ批判の発言を始め、最終日の試合にヴァヴリンカが姿をみせなかったこともあり、いろいろメディアに取り上げられているようですが、ここで一体スイスチームに何が起こっているのか? 調査して真相を探ってみました。

Photo: Keystone

フェデラーのヴァヴリンカ批判

フランスのメディアだけに書かれていたのなら、ここまで広がらなかったのでしょうが、AP(英語)の記事になると世界に伝わってしまいます。フェデラーは以下のようにヴァヴリンカを批判したとAP記者に書かれてしまったのです。

“I played well enough in doubles, but Stanislas not so much,” Federer said, adding that Wawrinka “didn’t have his best match in singles. It’s a shame, because of that defeat we weren’t able to put the U.S under pressure.”

僕はダブルスではよいプレーをしたよ。でもスタンはあまりよくなかった。彼はシングルスでもベストの試合はしなかったし。残念だったよ。あの敗北で僕らはアメリカチームにプレッシャーを与えることができなかったのだから。

フェデラーはドイツ語、フランス語、英語でインタビューを受けていますが、このコメントはフランス人記者に対してフランス語で語られたものです。APの記者はどこからこの情報を得たのかリンクを貼っておりませんので、コメントの真偽をつかむために、フランス語メディアをいろいろ調査してみました。

・・・フェデラーはやっぱり言っちゃったみたいですね。

le10sport.comというフランスのスポーツ紙はCoupe Davis : Federer critique sévèrement Wawrinka『デ杯:フェデラーがヴァヴリンカを厳しく批判』というタイトルで、フェデラーのコメントを紹介しています。この記者会見はダブルス敗退直後になされたものです。以下がフェデラーがフランス語でしゃべったヴァヴリンカに対するコメントです。

Moi j’ai fait un assez bon double, mais Stanislas pas tant, a déploré Federer hier. Il n’a pas fait son meilleur match en simple vendredi. C’est dommage, à cause de cette défaite, on n’a pas pu mettre les Etats-Unis sous pression.

つまりフェデラーのコメントはAP記者が英語で書いたものと全く同じもので、『ヴァヴリンカを批判』と書かれても仕方のない内容のものでした。しかもフランス語では以下のおまけがついているのです。

もし日曜まで行くことができていたら、僕とフィッシュの戦いは僕がfavoriteだったので、5セットまでもつれこんだかもしれないし、もしそうなったらどんな結果になっていたか分からないよ。

これは以下のようなニュアンスがあると取られても仕方がないでしょうね。

「もしヴァヴリンカが勝っていてくれてたのなら、プレッシャーも少なくて日曜まで行くことができたかもしれない・・・そうなれば僕が5セットまでいって、フィッシュに勝ってアメリカを破ることができたかもしれない・・・」

フランスの最も権威のあるLe Matinでは『フェデラーとヴァヴリンカの協力失敗』という内容の記事の中で、「僕たちはあまり一緒にプレーする機会がない」というヴァヴリンカのコメントを載せています。

1992年のオリンピックテニスの金メダル保持者のスイスのマーク・ロセットは、「私のパートナーのヤコブとはたくさんダブルスも組んで、お互いを理解できるように試合だけでなく、一緒にいる時間をもったものだ。フェデラーとヴァヴリンカは、もっと一緒にいる時間を増やしてお互いを理解するように努めるべきだ。」ときびしい口調です。つまり彼は「二人の協力体制がなっちょらんのよ!」と言いたいのです。

しかしダブルスに重点をおかない二人にとってはこれは仕方のないこと。いくら金メダルペアでも普段練習を積んでいないと、ストレートに負けてしまっても不思議でないのがダブルスなんですから。

言語・文化の違い

スイスチームはたるんどる!と批判する前に、スイスの複雑な言語・文化状況を知る必要があります。スイスは4カ国語 (ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ後)を母国語とする複雑なマルチ文化の国情があります。

私の夫はフェデラーと同じバーゼル出身でスイスド イツ語を日常語で話し、学校ではドイツ語で授業を受けます。ほとんどのドイツ系スイス人はフランス語を話しますが、フランス系スイス人はなぜだか(皮肉をこめて)ドイ ツ語を話しません。

ですからフェデラーはフランス語を話しますが、フランス系のヴァヴリンカはスイスドイツ語またはドイツ語ができないのです。

ス イスチームはキャプテンのルティを始め、フェデラー、チウンディネリ、ラマーはすべてドイツ語系。フランス語はヴァヴリンカ一人です。コミュニケーショ ンにギャップがあるだけでなく、文化の違いは大きなものがあります。私はスイスに仕事を含めて今までに30回以上訪問していますが、違った言語圏に行くと同じスイスなのにまったく外国に来たような感じを受けてしまいます。

いくらドイツ語系の選手がフランス語が話せると いっても限度があります。細かいニュアンスが伝えられないこともあるでしょう。ヴァヴリンカは会場がフランス圏のフリブールでしたが、スイスドイツ語のチームの中 に溶け込めないものがあったとしても不思議ではありません。

しかも今まではデ杯に貢献してきたのはヴァヴリンカで、彼がチームを引っ張ってきたのですが、フェデラーが入るとすべてフェデラー中心になり彼の居場所がなくなってしまったのかも知れません。

彼がどうしてホテルに引き込んでしまって、日曜日に会場に姿をみせなかったのか?

いろんな噂が飛んでも仕方がない行為です。キャプテンのルティは「疲れてしまってホテルで休んでいる」と弁解していましたが、真相はわからず気になるところです。

バーゼルのBasler Zeitungは Röstigraben zwischen Federer und Wawrinka?『フェデラーとヴァヴリンカの言語の障壁』というタイトルで興味深い記事を掲載しています。この言語とは文化のことも意味しています。

キャプテンのルティはスイスTVのインタビューで、フェデラーの敗北には触れずにヴァヴリンカの敗北に批判的なコメントを残したと書いています。フェデラーはルティの雇い主なのですからルティがフェデラーを批判できないのは当然のことですが、どうしてもキャプテンはフェデラーの肩持ちという印象がぬぐいきれません。

フェデラーの出場で、アメリカ人でさえもスイスが勝つと予想したデ杯でしたので、5敗はスイス人だけでなく、世界のフェデラーファンにとってもショッキングな出来事でした。彼自身もかなりのプレッシャーがあったと思います。それにしても意外とあっさりと負けてしまった印象はどうしてもぬぐい切れず、こんなことなら「スイスチームを分裂しろ」という声も聞かれる始末。つまりドイツ語選手とフランス語選手を分けろ、という主張です。しかし分裂とはいかないまでも、アメリカの団結したチームに比べて、ぎくしゃくした感じは免れませんでした。デ杯はやっぱりチーム戦でした。

フランス紙もドイツ紙も最後には「言語・文化の違い」で締めくくっていたことは興味深いことです。同じスイスとは言え、いろんな文化の違いを引きずる彼らは、うまくいっているときは表面に出てきませんが、うまくいかなくなるといつも浮上してくるのが、この言語・文化の問題です。

私の結論

しかし私が思うに、今回のフェデラーのヴァヴリンカ批判は、単なるフェデラーのフランス語表現の問題ではなかったかと思うのです。フェデラーのフランス語はうまいですが、微妙なニュアンスが伝えられるほどの流暢さはありません。昔ジョコヴィッチが英語インタビューでよく直接的な発言をして誤解されていたように、フェデラーのあの発言も直接的で、もしあれがドイツ語だったら違った表現をしていたと思います。

実際、ドイツ語や英語ではヴァヴリンカを批判するようなことは言っていないのですから。では彼が言いたかったことを私がロジャーになりかわって代弁しますね:

僕はダブルスではよいプレーをしたよ悪くなかったと思う。

でもスタンはあまりよくなかったちょっと本調子じゃなかったみたいだ。

彼はシングルスでもベストの試合はしなかったし。惜しかった。

あの(僕たちの)敗北で僕らはアメリカチームにプレッシャーを与えることができなかったのだから

私自身、このブログで皆さんと同じ日本語を使っても、要旨が伝わらずに誤解されることが多々ありますので、正確に言いたいことを告げるというのは本当に難しいと痛感しています。

たぶんフェデラーはヴァヴリンカに「いやあ〜、あんなこと言っちゃって悪かったよ。」と言ってそれで終わっているはず。こんなことでフェデラー/ヴァヴリンカの関係が悪化してしまうことはないと思いますが、このゴールデンダブルスペアがオリンピックから消えてしまわないようお願いしたいものです。

(更新)
今日13日のニューヨークタイムズの記事によりますと、今日ロッテルダムに着いたフェデラーはヴァヴリンカと連絡をとって誤解を解いたそうです。よかったよかった。

(更新)Mブライアン/フィッシュ def フェデラー/ヴァヴリンカ:4-6 6-3 6-3 6-3

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