ベケットの名言の入れ墨で失敗から立ち上がったワウリンカ

September 7, 2013 US Open:

今年の全米オープンは廃れていく片手バックハンドBHの選手のガスケとワウリンカの準決勝進出で新たな話題を呼んでいます。特にワウリンカは完成度の高いプレーで2位のマリーをストレートで破ってしまって驚きました。彼はいつもフェデラーの陰で地味な存在ながらスイスのためにデ杯を背負ってきた選手です。それなのにスイスでも彼への関心は低く残念に思っていました。もし彼がジョコヴィッチを破れば・・・冷たかったスイスだけでなく、世界がヴァヴリンカに注目してくれる時がやってきます。失敗を恐れず戦うワウリンカのエピソードを紹介します。
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2013年全米オープン準々決勝:ワウリンカ def マリー:6-4 6-3 6-2

二人の試合を生観戦したものの、肝心の最初の2セットは観ておりませんので、帰宅してからTVの再放送で試合を見なおしました。解説者が何度も「信じられない!」とマリーの不甲斐なさを嘆いていました。本当に。一体マリーはどうしてしまったのでしょうか。というよりもヴァヴリンカの完璧なプレーで封殺されてしまったマリー。

第3セットからアーサーアッシュで生観戦した私でしたが、周りはなぜか多くのインド人で埋まっていました。かつては英領インドだったせいか、イギリスに親近感を覚えるのでしょうね。マリー応援の一色。スイス人の私はワウリンカに対してはまだしこりが残っていますので(テニスのために妻子を一時捨ててしまった件に対して)それほど熱狂的に応援する気にもなれずおとなしく観戦していました。

ウィンブルドンブルーのマリー

スコアは正直ですね。どんどんと自滅していくマリー。全米オープンが始まった時からなかなか調子がでなく、何かまどろっこしいプレーで「こんなことではとても準決勝のジョコヴィッチには勝てない」とは思っていましたが、そこまでたどり着く前に倒れてしまいました。こんなにエラーが多く、イライラしてどんどん地獄に陥っていくマリーはショックでした。フェデラーの敗北の過程と酷似しています。どうしても立ち上がるきっかけを見いだせない・・・ワウリンカの見事なBHのパッシングショットで抜かれてしまうマリー。

Murray-USO-2013

ウィンブルドン優勝を人生の目標にしてきた選手が、優勝した途端に陥ってしまう現象を私はウィンブルドンブルーと名付けました。今年バルトリがウィンブルドン優勝を最後に引退してしまいましたが、マリーもそのブルー状態にあるようです。本人も認めていますが、昨年からオリンピック金メダル、全米オープン優勝、そしてイギリス国民の悲願のウィンブルドン優勝でホッと肩の荷が下りて、もうひとつ気持ちが燃えてこないマリー。

入れ墨はサミュエル・ベケットの言葉

今年の全豪オープンのジョコヴィッチとの4回戦は5時間にもわたって激戦が繰り広げられエピック戦となりました。この試合はワウリンカの足が痙攣をおこさなければ勝っていた試合でした。それだけにどれだけ無念だったことか。ポストマッチの記者会見で、ワウリンカはいたたまれなくなって、途中で泣き出して部屋から飛び出してしまったという話をスイスのバーゼル紙で今日知りました。

左腕にサミュエル・ベケットの名言、”Ever tried. Ever failed. No matter. Try Again. Fail again. Fail better.”の入れ墨が初めて写真で紹介されたのは今年のモンテカルロでした。最初の入れ墨は娘の名前のAlexia。そして2番目がベケットの言葉。祈る気持ちが込められた入れ墨の御利益があったのか、このモンテカルロでワウリンカはマリーに6-1 6-2で圧勝しています。

今までトライして失敗してきた。そんなことは大切なことではない。またトライしてまた失敗してみよう。そしてもっとうまく失敗してみよう。(サミュエル・ベケット)

Stanislas Wawrinka of Switzerland returns the ball to Denis Istomin of Uzbekistan during the first round of the Monte Carlo Masters in Monaco

Photo: Reuters/Eric Gaillard

Fail better.  いい言葉ですね。「これは私の人生のモットーなのです。」と語るヴァヴリンカ。

私たちはロジャーやラファやノヴァクやアンディではありません。彼らのように勝ち続けているわけではなく、私たちのほとんどは試合に負けています。しかし敗北をポジティヴにとらえ、また向かっていかなければならないのです。

Try again. それはシンプルなことなんです。と語るヴァヴリンカ。

「テニスに専念したい」という言葉を残して妻子を捨てて、一時的なものだったにせよ、家を出てしまったヴァヴリンカに許せない気持ちがありましたが、この話を読んで今まで彼に対して曇っていた気持ちが徐々に晴れてきました。テニスに対してあまりにも一途な気持ちが極端な行動を取らせたのでしょうね。しかし家族の愛がいかに人生にとって大切かを知ったワウリンカはこの過ちを犯すことによって、人間としても大きく成長したと思います。

Fail again.   全豪オープンのジョコヴィッチ戦に敗退したものの、ワウリンカは大きな自信を得ました。彼のプレーがいかに素晴らしかったかを『5時間の死闘:ジョコヴィッチに迫った驚くべきワウリンカの進化』で詳しく説明していますので、参考にしていただければマリー戦の勝利をより理解していただけると思います。

FHの向上でテニスの組み立てに深みがでてきたワウリンカ。回り込んでFHでオープンスペースをつくり、得意のBHのダウンザラインでウィナーを決めるパターンは強力な武器となりました。

Wawrinka-USO-2013

数時間後にジョコヴィッチとの準決勝が始まります。ベケットの言葉にはsucceedの言葉はありません。サクセスに見えてもまだまだ失敗が先に待っている。たとえジョコヴィッチに勝ったとしても今度は決勝でナダル(たぶん)が待っています。しかし記者会見で泣いて逃げてしまったあのワウリンカの姿はありません。Fail better.  敗北を乗り越えて強く成長していくヴァヴリンカ。どんなエピック戦になるか楽しみですね。

Hopp, Hopp, Stan!

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13 Comments

  1. comoestamiyasitaさん

    オリンピックで日本に活気が生まれればいいですね。サファリの後に南アのヨハネスブルクに行ってきましたが、ワールドカップの会場はメンテナンスが高くつきすぎて全く使われてないのだそうです。もったいない話です。モントリオールでは開催に間に合わなかった会場もあり、まあいろいろ大変でね。

    圭君のFacebookで「2020年のオリンピックに国の代表となってがんばりたい」というメッセージが載っていましたが、彼はその時は30歳ですね。どんな選手に育っているのか楽しみですね。

  2. tomo68さん

    スタンがベスト8になればロンドンですが、そうなるとロジャーかツォンガか、誰かが落ちてこなければなりませんが、それも辛いもの。厳しいですね。

    pegasuswmさん

    スタンがアグレッシヴに攻め、全般的にジョコよりもベターでしたね。(これはスタン自身も語っていましたが)4時間9分でしたが久しぶりにフルセットの醍醐味を味わいました。反対にラファvsガスケは途中で寝てしまいましたが。

    しかし足の故障もあったと思いますが、ベターでありながら最後には負けてしまうのはやはりそれなりの理由があり、興味深い試合でした。

  3. 杉田が上海チャレンジャ-優勝ですね。杉田も守屋もビッグポイントで良かったですね。

    本来なら、ドラゴンがこの決勝戦に来るべきだったんでしょうけど、もうあまり僕らが思うほど差はないんでしょうね。

    東京オリンピックはちょっと驚きでした。

    2024年がパリオリンピック100周年で、2回連続欧州はないので、マドリッドは絶対なく、イスタンブ-ルだろうと思ってましたので、驚きました。

    経済効果が大きいので、大いに結構ですね。

  4. スタンとジョコとの試合はおもしろかったですね!

    スタンについては、初めは良くても尻つぼみになるような、なんとなくメンタルのもろい選手、みたいな印象で(よく知らなかっただけかもしれないけど)、ほとんど関心もなかったんです。でも今年の全豪のジョコとの死闘を知って以来、その後も結構惜敗(マスメディアのお世辞ではなく、本当の惜敗)試合がつづいたこともあって、ファンになりました。

    スタンは童顔な感じなんだけど、体型からくる全体の印象は、週末に家の芝生を刈っているハーフパンツのお父さん、という感じで、童顔なんだから若くみえても良さそうなのにおじさんに見えるという、なんだかちぐはぐですごくおかしい気がして、ひとりでクスッとしています。本人も若く見られるのがいやで髭面にしてるんでしょうかねー。

    とにかくスタンの試合をしっかり観戦したのは今回初めてでしたが、片手バックハンドの、
    ダウンザラインは格好いいですねー、ホレボレ!それに本当にフォアハンドのストレートも豪快でいいですね、スタンのテニスって簡単そうに打ってるのに力強い、テニスの格好良さのひとつの見本みたいですねー。
    今回は、ちょっと怪我もあったと思うけど、最後は根負けしたようなところもあった気がするので、次こそは惜敗ではなく、敢闘勝利にしてあげたいです!

  5. 大会も終盤を迎え、試合数も少なくなってきているので、tennisnakamaさんもひと息つけているといいのですが…2週間近い「激務」本当にご苦労様です。
    TV or ライブ配信での観戦でしたが、こちらで興味深い記事を毎日読ませて頂きながらでしたのでとても充実してました。
    それと、全米は特に時差が大き過ぎて慢性的な寝不足がツラいのですが、今年は2週目に合せて会社の夏休みを取ったので、余裕の毎夜の夜更かし、「お祭り」感覚で楽しめました。来年もそうしようと思ってます!

    さて、ヴァヴリンカVSジョコ、全豪の時も白熱してましたが、今回も期待を裏切らない見ごたえのあるレベルの高い試合でしたね。(一方でナダルvsガスケは少し物足りなかったです。ガスケにはもうちょっと頑張って欲しかったなぁ…)
    TOP4とも互角以上に戦える事を証明した、進化したヴァヴリンカ、居合抜きのようなバックアハンドのDTLも素晴らしいのですが、剛球フォアハンドの威力も凄まじいですね!
    顔つきも引き締まった精悍な感じになってますよね?

    まだ気が早いですが、ツアーファイナルズに出場できたら「台風の目」になるのではないでしょうか?

    さて、ウィンブルドンに続き全米もBEST4には常連以外に二人(今回は若手ではありませんでしたが)も食い込んできて、いつもとは違う顔ぶれの対戦を楽しめました。で、決勝はランキング1位と2位の対戦ということで、どちらが勝つしろ好勝負で締めくくってくれることを期待しています。

  6. ヴァヴリンカVSジョコヴィッチ、epic matchでしたね。。。
    個人的にはヴァヴリンカを応援しておりましたが、ジョコヴィッチのフィジカルの強さには驚くしかありません。。。
    腕のタトゥーについては、試合後のインタビューでも取り上げられてましたね。
    まだ28歳!まだまだ進化し続けて華麗なシングルバックハンドを見せて欲しいです!
    tennisnakamaさんの決勝の予想はいかに?

  7. 東京がオリンピックの開催地に選ばれましたね。おめでとうございます! 第1回の時は私は高校生でした。あの時の興奮は今でも忘れられません。2020年。7年後ですね。長いなあ〜。

  8. 祖父と比べると、バブリンカに申し訳ないですが、まあ、気持ちは似たようなものだったのかもしれません。

    やはり、ホームのあるサッカーや野球など他のプロスポーツと違い、テニスは世界中を転戦するので、キャリア途中での結婚は無理がありますね。

    ゴルフも転戦しますが、エリアが結構限定されるので、テニスに比べたら遥かに家庭生活へのプレッシャーは少ないですね。

    ロジャーやサンプラスにしても、キャリア後半ですからね。アガシの場合も後半で、しかもグラフですからね。

    気丈な祖母は、祖父の帰宅を冷静に受け止め、東京土産は何ですか?と祖父に聞いたら

    「関東大震災で救助活動をした表彰状を、高橋是清東京市長から貰った。」と丸めた感謝状を渡したそうです。

    (僕もその感謝状は見て、高橋是清は東京市長もしてたのか、と驚いたんですが、高橋是清が東京市長をしていたなんて記録は無いんですよね。祖父がドサクサ紛れで勝手に作ったのかもしれません)

    祖母は、上京中に描いた絵のことを聞いたらしいのですが、自分の才能に失望していた祖父は死ぬ間際まで、絵を行李にいれたまま出さなかったんですね。

    バブリンカとはえらい違いです。

  9. comoestamiyasitaさん

    おじいさんの件はちょっとおかしいですね。地震で地が固まったのですね。

    私はスタンが妻子をテニスのために捨てた時のことを詳しく記事にしています。
    http://tennisnakama.com/blog/2011/01/10/wawrinka-announce-divorce-twiiter-201/

    「僕は新しいコーチをつけることにした。(これは元フェデラー、サフィンのコーチであったルンドグレンのこと)僕は変わったんだ。僕には他にやりたいことがある。テニスにプライオリティーをおきたい。5年間テニスのためにベストを尽くしたい。テニスにすべてを賭けることにしたんだ。」

    何かおじいさんと似ていますね。スタンの場合は結局このコーチとも一年で決別して、家族が大切なことに気づいて妻子の元へ戻ってきてハッピーエンド。ルンドグレンが地固めに役立ったようです。

  10. プロの絵描きになりたかった祖父は

    「お前達を捨てる、許せ。」と置き手紙をして、九州の田舎から東京に大正8年に出て行ったそうです。

    しかし、才能もたいしてなく、東京市立高校で美術の臨時講師をしながら細々と絵を描いてて、どうも無理みたいだなと諦観してたら、大正12年に関東大震災が来て、それを理由にある日、祖母の元に

    「ただいま!」

    と今朝仕事に行って来たような顔で帰ってきたそうです。

    レベルは全然違いますが、バブリンカも案外こんな感じだったんじゃないでしょうか?

     

  11. やはり、世界中を転戦する職業では、現役真っ盛りの結婚生活は辛いですね。

    テニスコートが別にもう1種類あるようなものでしょう。精神的な負担になりますね。ましてや、遠征先に妻から「子供が高熱出して、痙攣起こしたのよ。」とか電話があったりしたら、テニスどころじゃありません。

    現役と家庭を両立出来るのは、家族全員を引き連れて世界を回れるロジャークラスしか無理なんじゃないでしょうかね。

    でもロジャーの店じまいの雰囲気が漂う中、良いタイミングで成績を上げてきましたね。バブリンかの名前を聞いてかなり経ちます。ここらで、一花咲かせてもらいたいですね。

    上海チャレンジャーは、とうとう、杉田と守屋の決勝戦になりました。日本人対決は嬉しいですね。

    あのマスターズをやった蓮の花の形をしたLotusDomeのセンターコートなんでしょうね。あそこの決勝戦に出れるだけでも、一生の思い出ですね。

    上海は昔からの国際都市で、比較的反日感情は強くないみたいですので、多くのお客さんに来てもらいたいですね。

    しかし、チャレンジャーのポイントに比べて、GSポイントは少なすぎますね。

    結局、添田は10ポイントしか貰ってないんですよね。予選勝ち上がりだから、20ポイントと思ってましたが。

    同じ4試合戦って、内山は29ポイント、全米OPの大舞台の添田が10ポイントは釈然としませんね。GSポイントが少なすぎます。

    賞金は20倍くらい多いので良いとは思いますが。

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