奈良くるみが決勝で惜敗:アビューズされるトイレットブレーク

Aug. 4, 2014 Washintgon D.C.:

奈良くるみがあの小柄の体格でワシントンD.C.の大会で決勝まで進出。重量級のクズネツォヴァにフルセットで惜敗してしまいましたが、小柄な選手がお手本にしたい魂をこめた素晴らしい内容のプレーでした。この試合で解説者たちが声を大にして取り上げていたのが、トイレットブレークのアビューズです。第2セットを落としてしまったクズネツォヴァはロッカールームへ。やっと5分後に現れましたが、最近目立ってきたのが、作戦上のトイレットブレークです。

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ITF(グランドスラム)やATPのルールブックで使われている公式用語がToiltet Breakですが、メディアなどがカジュアルに「バスルームブレーク」と呼んでいますが、同じルールです。

アビューズされるトイレットブレーク

ワールドカップのすざましいコンタクトスポーツを観て、今さらながらテニスのクリーンなスポーツの存在価値を再発見された方も多いと思います。しかしサッカーやバスケットボールのコンタクトスポーツと比べて、タイムアウトのルールが曖昧で、その盲点をついたタイムアウトのアビューズが目立ってきている傾向があるのは残念なことです。テニスが今後スポーツエンターテイメントで生き残っていくには、独自なクリーンなイメージを守っていかなければならないと思っています。

タイムアウトにはインジャリータイムアウトとトイレットブレークの2種類があります。選手の名前は忘れましたが、最近の記者会見で、インジャリータイムアウトを気分転換をするために取ったと語っていた選手がおりましたが、ショッキングな発言でした。

最近は特にトイレットブレークが公然とアビューズされているように思います。あのスポーツマンシップで知られるフェデラー自身も、「気分を一新するために」と言ってトイレットブレークをとることがあります。フェデラーの行動はテニス選手の模範だけに、「フェデラーもとっているのだし・・・」ということになり、ほとんどの選手がリードされてくると必ずトイレットブレークをとるようになってしまいました。フェデラーのせいにはしませんが、一昔前には考えられなかった現象です。

タイムアウトをとることで、リードしている相手のリズムを崩すことができます。メンタルが強ければ、「どんなことにも影響されないはず」と言うのは、トップレベルのトーナメントを経験しない素人の発言です。

錦織圭も最近の試合で、リードされてしまったときに、「トイレですべて着替え、顔を洗って気分を変えた」と語っていました。このように選手たちにルール違反をおかしている罪悪感がないのは、ルール自体に問題があるのだと思います。

セットを落としてしまった選手に対して、「ここでトイレに行くべきだ」とサジェストするギルバートなどのような解説者もおりますので、このトイレットブレークは完全に形骸化されてしまったルールになってしまっています。

問題の解決法として

意味のないルールなら、トイレットブレークを取りやめてしまうべきだと思います。

下痢や嘔吐の緊急な場合はメディカルタイムアウトをとればよいのです。着替えが目的でタイムアウトがとれるスポーツは他にありません。もしどうしても着替えたいのなら、ベンチでやればよいのです。ショーツの履き替えも、大きなタオルを使えば問題ありません。

新しいタイムアウトのルールをつくってもよいと思います。

試合の流れを変え、一方的に負けてしまった選手が第2セットで盛り返す試合はエキサイティングなものです。気分転換が必要なら、タイムアウトを1回とれるようにしてはどうでしょうどんな理由にせよ、チェンジオーヴァーでタイムアウトを1回とることができるようにするのです。しかしタイム制限を設け、超過するとペナルティを与えます。トイレが遠い会場もありますので、タイムアウトの時間は審判の判断に任せます。試合が始る前に、審判はサーヴは25秒、2分のチェンジオーヴァー(コートチェンジ)などと選手にルールを説明しますが、その時にタイムアウトは何分、と付け加えるのです。これで明確なルールとなります。

クズネツォヴァ def 奈良:6-3 4-6 6-4

奈良くるみは155cm53kg。クズネツォヴァは174cm73kg。奈良よりも20cmも高く、20kgも重く、そして2個のGSタイトルの保持者のクズネツォヴァでは、誰の目にも勝ち目のない試合でした。そのせいか、男子決勝の後、会場はほとんどの人が帰ってしまってかわいそうなほどガラガラでした。

クズネツォヴァの武器はパワーです。奈良は小柄な体格のハンディもあって、これといった武器はありませんが、クズネツォヴァに優っている点は、フィットネス、足の速さ、最後まで諦めない粘りのメンタルです。

前半はお客様の接待で見逃してしまいましたが、第1セットは予想したように、クズネツォヴァのパワーに圧されてしまった一方的なセットだったようです。

第2セットで奈良はクズネツォヴァのリズムを崩さなければならないのですが、最初のサーヴィスゲームですでにブレークされてしまい、0−3とリードされてしまいました。このままいけばクズネツォヴァはますます勢いを増して、逆転は不可能となります。奈良は作戦の練り直しと気分を一新するためにコーチをベンチに呼びました。このタイミングはとてもよかったと思います。

クズネツォヴァの弱点はフィットネスレベルがそれほど高くないために、疲れてくるとインテンシティを失ってエラーが多くなること。奈良はギリギリを狙うのではなく、安全圏に打って、ともかくクズネツォヴァのショットをカウンターして、ラリーを続けました。疲れてきたクズネツォヴァは早くポイントを決めようとエラーが増え、第5ゲーム(1Nー3K)で奈良が見事にクズネツォヴァをブレークバックしました。

第6ゲーム(2Nー3K)で奈良は3度のBPに瀕しましたが、何とかゲームをキープ。3度もブレークチャンスを逃してしまったクズネツォヴァは、メンタル的にも疲れが目立ち、エラーで自滅のブレークを許してしまいました。クズネツォヴァの弱みをうまく攻めた奈良のプレーは見事でした。

このブレークで自信を深めた奈良は、アグレッシヴなショットでクズネツォヴァを攻め、Serving for the set の第10ゲーム(5Nー4K)では、1ポイントもクズネツォヴァに与えることなく40−0で第2セットを勝ち取りました。

ここからが問題のクズネツォヴァの長いトイレットブレークです。

Kuznestova def Nara 2014

Pain doesn’t kill me, I kill the painのtattooでshe killed Nara

クズネツォヴァは作戦勝利? 

解説者がここで繰り返し問題として取り上げたのは、「クズネツォヴァの長いトイレットブレークはアビューズではないのか?」という点です。ブレークには特別にはっきりした時間制限がないために、シャワーを浴びて気分を一新する選手もいるとか。

女子は3セットの試合では、トイレを使用しなくても、テニスウェアを着替えるために、各セットの終わりにトイレットブレークをとることができ、計2回が許されています。

男子はグランドスラムの5セット戦では2回とることができます。ATPツアーの3セット戦では1回のみで、男子はトップの着替えはベンチでできますので、原則では着替えを理由にトイレットブレークをとることはできないことになっています。

着替えのためにトイレットブレークをとったクズネツォヴァはルール違反ではありませんが、問題は時間の長さです。もし彼女が第1セットを落とし、2セット目を取っていたのなら、モメンタムをキープするために、トイレットブレークはとらなかったはず。

第2に解説者の間で問題になったのは、異常なボリュームのグラントです。第2セットまでは声をそれほど出さなかったクズネツォヴァが大声を張り出し始めました。奈良はほとんどグラントをやりません。子供のような小さな奈良が、クズネツォヴァのゲームマンシップにもかかわらず、必死に戦っている姿は感動的なものがありました。解説者やアナウンサーもハートのある奈良のプレーを絶賛していましたね。誇り高かったです。

第3セットではトイレットブレークで心身とも一新したクズネツォヴァが、体力を回復し、アグレッシヴに奈良を攻めます。パワフルなクズネツォヴァのショットに奈良もギアアップして対抗。決勝にふさわしいハイレベルなセットとなりました。

第9ゲーム(4Nー4K)クズネツォヴァのサーヴです。奈良は2ndサーヴをアタックしてリターンエースを取り始めました。アグレッシヴなリターンで、クズネツォヴァはプレッシャーを受け、エラーが目立ち始めました。ついにBPへ。もしこのBPを奈良がとっていたなら、ひょっとして奈良が優勝していたかもしれないビッグポイントでしたが、クズネツォヴァがFHのウィナーを打ち放しデュースへ。GSタイトル選手のガッツのあるショットです。

第10ゲーム(4Nー5K)ではクズネツォヴァはエラーを恐れず、アグレッシヴなリターンゲームを展開。15−40のマッチポイントを奈良がFHを出してしまってクズネツォヴァの優勝となりました。

奈良はまだ22歳。小柄であっても、オンザライズで肩の打点で打てるショット力、コンシスタンシー、少々のことでは動揺せず最後まで諦めない強いメンタル、ダブルスの経験を活かしたネットラッシュで相手のリズムを崩すネットプレー・・・などなど、パワフルな武器がなくとも、頭とハートで今後が楽しみな選手に成長しました。

トップ30で全米オープンのシード選手へ

ワシントンの決勝進出で33位に上がった奈良の将来は明るいですね。次に背の低い161cmのシブルコヴァは現在は12位。ハイランキングは10位で、奈良のトップ10も夢ではありません。全米オープンではこのままランキングを維持していければシード選手になれます。頑張れ!くるみちゃん!

4 Comments

  1. フェデラーのトイレットブレークをやたら取り上げて論じられてますが、ならばナダルのMTOについても取り上げたらいかがでしょうか?
    フェデラーがスポーツマンシップのない行為をするから他の選手も追随してしまうとの事ですが、ナダルの戦略的MTOはどうなんでしょう?
    理由が曖昧なMTOのほうがトイレットブレイクよりも問題だと思いますよ。
    MTOを取る前と取った後で不自然な程プレイの変わらないナダルについてもブログ主さんはどう思われているか知りたいと思います。

  2. 本当に奈良さんは大会を通じてとても良い戦いを
       しましたね。
     その試合、試合を通じて、強いメンタルを作戦に反映させる
        力を増してきた印象でした。

      小柄でサービスに威力が無い分、
        相手に一方的にもって行かれる試合もありましたが、
         着実にストローク力を高めてきて、それが結実。
      2013年のポートランド5万ドル大会優勝が自身となり、
       同年の全米予選から3回戦進出、大坂大会の活躍をへて
        本年はWTA本戦ダイレクトインが定着、
         全豪3回戦、リオ大会でWTA初優勝と驚く成績を上げて
           来ていますね。
       ウインブルドン2回戦ではビーナスを第一セットはストローク戦で
         押し込んでいました。
        その奈良さんが今回は更に強くなったと感じられるのですから
          (TennisTVの実況者も絶賛する場面が多くありました)
              今後が楽しみです。

         早く怪我を克服して(早い決断で心配は少ないと期待していますが)
           全米に向け活躍してほしいものです。

  3. こんにちは。ほんとにくやしい試合でした。 勝ってたよ~と わめいてました。 1-1になったので
    あわてて ストリーミングで観戦。  見ごたえのあるゲームでした。 頭の上のボールを 打ち返すの
    すごいですねぇ。 なんとかランキング32位内に入ってほしい!

    クズネツォウ”ァは、ふらふらで くるみちゃんは、元気に走り回ってました。 決勝の3セット目でも
    元気いっぱい!!ジュースを繰り返す場合 絶対にとらないといけないんですね。

    グラントは、セレスのときに 苦情がたくさん出てたのに なぜ認められたのか? 
    セレスの試合は、グエッという声を聞きたくなくて音を消して観戦してました。

  4. 今朝のNHKニュースのスポーツコーナーで、珍しく(?)この決勝戦の様子を映像つきでやってました。
    優勝した瞬間のクズネツォヴァの喜びぶりから、くるみちゃんが対等に試合をして、どれだけクズネツォヴァを追い詰めていたかが分かるようでした。
    小さくても出来るんだ!って、今後も自信を持って頑張ってほしいですね。

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