ジョコヴィッチと準決勝で対決するドルゴポロフのサーヴを解剖

Aug. 22, 2015:(ジョコvsドルゴ戦を更新)

今日66位のドルゴポロフがシンシナティの準決勝でジョコヴィッチと対戦します。トップ選手でない選手が登場するのは楽しいもの。3年前には13位だったランキングも、怪我やロシアのウクライナ侵攻などによる心憂い状況の中で、ランキングも停滞していましたが、予選から勝ち抜いて、昨日はベルディヒに快勝。見事なオンザライズの速攻と電光サーヴで、ジョコヴィッチは苦戦するかもしれません。


Dolgopolov-serve

ドルゴのサーヴ

ドルゴポロフはモンフィス、フォニーニと並んで、テニスのハードコアファンに人気のある選手。錦織と背丈も同じで、プレースタイルもオンザライズの速攻と、ショットの豊富さは彼と似ていますが、違いはサーヴです。

特徴はロー(低い)トスとラケットスピードの速さで、モーションが速いために、相手に読まれにくい利点があります。トスをしたと思えばバーン!とパワフルなサーヴが入ってきますので、相手はリズムが取れない。ビデオはスローモーションですので、その速さはわかりづらいと思いますが。また同じモーションですので、方向が読めない利点もあります。

相手が予期できないショットメイキングはテニスの本髄ですが、ドルゴのフォームは変わっていますので邪道とみなされてきました。しかし過去に邪道とみなされたサーヴでチャンピオンになった選手は、イヴァニセヴィッチ、マッケンロー、ロディックなど、正道でないサーヴが武器の選手が結構多いのです。

従来はサンプラスのサーヴが理想的だとされていました。ラケットを下から大きく円を描くモーションはサンプラスでこそ正確なサーヴを打つことができますが(彼の肩の関節は特殊なんだそうです)、モーションはシンプルであればあるほど精度が高くなることがわかってきました。

今日ではフェデラーのサーヴが無駄な動きがなく、最も美しいとされていますが、足を引き寄せる余分な動作はなく、その分高くジャンプをしてパワーアップをはかっています。

ロートスで足を揃えたまま、速いラケットスピードで打つサーヴのパイオニアはロディックです。彼の153マイル(246km)のサーヴを全米オープンの最前列で見ましたが、まさに弾丸で全く追うことができませんでした。彼のサーヴはあまりにも違っていましたので、最初は異様に映りましたが、豪快なサーヴのために誰も批判をする者がいませんでした。つまりスポーツはフォームでなくて結果がよければすべてよしなのです。

ロートスのパイオニア的選手はゴラン(イヴァニセヴィッチ)です。彼は両足を大きく開いて、体を後ろに引きながら勢いをつけて豪快なサーヴを打つ選手。この変わったフォームで、爆発的なパワーと正確なプレースメントで史上最多のエース王として君臨しています。(間もなくカーロヴィッチに追い越されると思いますが)

ロートスはゴランからリュビチッチに伝えられ、クロアチアの未来の星、チョリッチにみることができます。ゴランが同じクロチアのチリッチのコーチになって、まず最初にサーヴのトスを低くすることから始めました。ロートスは風の影響を受けににくい点と、タイミングが合わせやすい利点があり、瞬発力でパワーアップすることでチリッチのサーヴが改善され、全米優勝に導いた大きな原因のひとつといわれています。

体型によって、また好みによっていろんなサーヴィスモーションがあってもよいという柔軟な考え方が受け入られるようになったわけですが、ドルゴの場合、父親が有名なコーチで、20歳までコーチングしてドルゴの基礎を築き上げましたが、立派なのはこれだけ変わったフォームを許してきた寛大な態度です。ドルゴの真価を見抜いていたのでしょうね。

ではどこからこのようなサーヴが生まれたのでしょうか?

私はジュニアの頃はオーソドックスなサーヴをしていたのですが、ジャンピングして打ってみると速く打てることがわかったので、この方法に変えました。有利な点は相手が私のサーヴを読めないこと。誰に教えてもらったわけでもなく、自身で開発しました。

元コーチのフォックスは以下のように述べています。

彼はとてもフィジカル的に優れていて、腕が柔らかく、そして速く、爆発的な瞬発力があり、彼の過激なアタックで相手は混乱してしまうのです。

従来のトスはトスを高く上げて下がってきた時点でラケットに当てるのですが、ドルゴのトスはちょうどボールが頂点に上がった時にうち、狂いもすくなくなります。

この打ち方は私も使っていますが、現代サーヴの主流となっています。

マリーも「彼のプレースタイルは特殊で、リズムを取らせてもらえないので、多くの選手が苦手意識を抱いています。しかも彼は本当に素晴らしい選手なのです。」と賞賛していました。

ベルディヒ戦ではまるでダヴィデンコのようなビデオゲーム的な正確なショットの連打で、観客は大喜びでした。普段はリスクが多いショットメイキングでエラーが多く自滅してしまうのですが、シンシナティではビッグポイントを落とさない賢明なプレーで、第2セットはベルディヒの追随を許さず、ダブルブレークをして圧勝しました。

さてあと1時間後に始まるジョコヴィッチ戦ですが、速攻サーヴィスゲーム(ドルゴ)とベストリターンゲーム(ジョコ)との戦いで、エキサイティングな試合が期待できそうです。

(更新)

試合の内容を記録しながらのツイートしてみました。

ジョコヴィッチ def ドルゴ:4-6 7-6(5) 6-2

第1セット

錦織の棄権で予選上がりのドルゴポロフが錦織のスポットを得て本戦入り。すでに第1セットの第3ゲーム(1−1)でジョコヴィッチをブレークしました。ジョコは様子をみているというか、エネルギー度が低いというか・・・ドルゴの見事なドロップに会場は拍手喝采。ドルゴの方が応援が多い感じ。

しかし調子がよい出だしだったドルゴがダブルフォルトを2度繰り返して自爆。ブレークバックされてしまって3−3の振り出しに。

ドルゴはしかしジョコにリズムを与えず、ジョコはエラーの連発。最後にドルゴが得意のドロップで見事にブレーク。ブレークばかりを繰り返す不思議な試合。ジョコードルゴ:3−4

ドルゴのServing for the set。最後まで冷静さを失わないドルゴ。15−15でうっそーのサイドスピンのドロップ。しかもベースラインからよろけながらのマジックショットに会場が割れんばかりの拍手。ドルゴのセットポイントはエースで決め、会場は総立ちの拍手を送りました。

第2セット

ジョコの動きが鈍い。得意のBHもエラー。BPがすでに2度。やっとブレークを免れて1−0。ドルゴのアグレッシヴな勢いは止まらず、ダウンザラインのウィナーを連発。ドルゴのエキサイティングなテニスに会場は大喜び。解説者も「楽しいねえ!」

ドルゴはサーヴだけでなく、ショットをいろいろミックスしてジョコにリズムを与えず、ジョコは武器のBHが入らない。ジョコがお腹を押さえていて顔をしかめている。腹筋を痛めた?とにかく普段のジョコではなく、トレーナーを呼んでMTO。お腹を押さえてチェックしてもらっているが、痛そう・・・

医者がやってきた。痛み止めの錠剤をもらって飲んでいるが、マッサージをしてもらう様子もなし。3−2で試合再開。ドルゴはフォーカスが途切れることなく、見事なBHのダウンザラインのウィナー。

ジョコのショットにはパワーはないが、丁寧に打っている。痛み止めが間もなく効いてくるのでそれまでは我慢のプレー。BPでドルゴがミスを犯して助けられ、なんとか3度のデュースを切り抜けて4−3。

痛み止めが効いてきたせいか、ジョコのショットにパワーが。どんどんギアアップするジョコに焦り始めたドルゴがすべてFHのエラーで自滅のブレーク。しかしどうしたことか、ジョコが怒りだして(たぶん会場の騒音)どんどんエラーを犯して0−40で自爆し、ブレークバックを許してしまって振り出しに

ジョコが審判に不満を訴えている。どうやら観客の一人がうるさいらしい。審判はマイクでその観客に向かって注意。立派。ジョコの1stサーヴは65%。ドルゴは48%。ドルゴはサーヴィスゲームをキープできればタイブレークに突入。

いよいよタイブレーク突入!ジョコはほぼ普段のプレーに戻り、確実なショットでエラーをせず。ドルゴは時々電撃ウィナーを放ちながらも、エラーが増えてきて、セットポイントはジョコのFHクロスウィナーで第2セットを勝ち取りました。さすがチャンピオン。

第3セット

第3セットです。ジョコは徐々にギアをあげてきますが、ドルゴに疲れがみえてきてフットワークが鈍くなりエラーが増えてきました。第3ゲーム(1−1)で、ジョコはエラーをせず、ウィナーもなく、ひたすらカウンターパンチのテニスでドルゴのエラーを誘います。賢い作戦。予想通りドルゴが自滅。

第1セットでドルゴがシューズを履き換えて不思議に思っていましたが、トレーナーを呼びマメの手当てをうけています。ギルバートはシューズのせいにしていますが、それにしても足底にマメができると走れないですね。フットワークが落ちてきたのは、疲れではなく、マメが原因のようです。

3−1。ここからがNo.1の見せ所。調子がでなくても、苦しい状況の中で勝てる試合を展開するジョコ。ドルゴはディフェンスになったり、オフェンスになったり。フットワークも落ちて最後はダブルフォルトでダブルブレークで4−1。どうしても元のように走れないドルゴ。ジョコの勝利は目前で5−1

ジョコヴィッチが4-6 7-6(5) 6-2 で決勝進出です。どんなに調子が悪くても、痛みが走っても「敗北を認めない」ファンティングスピリットで頑張ったとジョコが語っていましたが、根性だけでは勝てないのが試合。すべての総合点で勝っている選手が最後には勝ってしまうのは当然かも。

ジョコのウィナーが14に比べてドルゴは36と圧倒的に多いのですが、エラーも55と圧倒的に多く、リスクを負うアグレッシヴなプレースタイルを反映しています。ダスティン・ブラウンもそうですが、リスクが多いだけに華やかでスリル満点のテニス。観客は彼に大きな拍手を送っていました。パチパチ。

3 Comments

  1. chaoさん、goranさん

    ドルゴポロフのオフィシャルなニックネームはDogです。ボディにThe Dogと書いた愛車は日産のGT-Rだそうですよ。

  2. ドルゴの解説、ありがとうございます。
    サーブのスローモーション、何度も見ましたが最後が独特ですよね。
    トスを低くする方がいいというのは慧眼ですね。
    サーブの説明でゴランの例も出してもらえてうれしかったです。

    ドルゴポロフはみんなドルゴって呼ぶのでしょうか?

  3.  ドルゴポロフのことを記事にして下さり、どうもありがとうございます!

     くいっと腰をひねった瞬間にバーン!というあの独特なサーブ、最初に見たときには「なんじゃこりゃ?」とびっくりしました。でも、たとえ時に雑で粗くても(笑)、無難な安全策をとらず、イケイケドンドンで攻撃を仕掛けていくプレースタイルに魅了されました。あの髪型も好きです♪

     以来、ドルゴポロフの試合はできるだけ観るようにしています。非常に強い個性があって魅力的な選手ですが、なかなか彼の試合が放映されないのが残念です。去年の後半あたりからでしょうか、目立った成績を上げられなくなり、ランキングがかなり落ちてしまいました。

     ドルゴポロフは自分で凡ミスをどんどん積み上げて自滅、的な敗戦が多かった印象ですが、準々決勝の対ベルディヒ戦では、人が変わったように終始冷静でした。エラーも少なかったですね。

     逆にベルディヒのほうが苛立っていたようです。途中で主審に激しく抗議していたのは、あれは試合中にも関わらず、会場に音楽が大音量で流されていたことにでしょうか。それ以外にも、ベルディヒはなんだかイライラしていて不安定な様子でした。なかなか殻を破ることができないでいるベルディヒ、ちょっと心配です。

     ドルゴポロフはジョコヴィッチ相手に善戦しました。今回の大躍進でランキングもだいぶ上がるそうでよかったです。

Comments are closed.