引退したクライスターズが優勝者ペトコヴィッチに勝ってしまったのですが・・・

Feb. 16, 2015 Antwerp:

2012年の全米オープンを最後に引退したキム・クライスターズが、今年のベルギーのアントワープでトーナメントディレクターとしてデビューしました。初めての経験だけに、スター選手のブシャールが2回戦ですでに敗退してしまうなど、冷や汗事態がいろいろありましたが、決定打は決勝日で選手の一人が急遽棄権してしまったのです。さあ大変!

[private]

Clijsters-beat-Petkovic-2015

スペインのカーラ・スワレナバロとドイツのアンドレア・ペトコヴィッチが決勝で戦う予定だったのですが、当日の朝、突然スワレナバロが首の痛みが激しくプレーできなくなってしまったのです。

ここで慌てたのがクライスターズ。このような緊急事態では、普通はエグジビションをやって、何とかお客さんに納得してもらうのですが、周りにプレーできるような選手はいない!”Oh! Shxx!”

ディレクター自らラケットを握るしかない!前代未聞(たぶん)のトーナメントになったわけですが、それにしてもクライスターズが優勝選手に勝ってしまうなんて!

出場選手たちは、劇でいえばディレクターにとっては大切な役者たち。役者たちを引き立てなければならないのがディレクターの役目。急遽代役で舞台に出なくてはならなかったにせよ、ディレクターが主演者をさしのけて拍手喝采を受けはならないのです。ディレクターはあくまでも陰の演出者なのですから。アントワープの主役はペトコヴィッチでなのですから。

そういえば、福島が津波の悲惨な状況にある時に、クライスターズが「放射能が恐くて、これからは日本には行けないわ。」その時の彼女のスポンサーがシチズンだったにもかかわらず、この無神経なコメントに驚いてしまいました。心の中で思っていても口に出すのはどうかと・・・他の選手は必死に大災害と戦っている日本に対して「ガンバレ、ニッポン!」と応援してくれていた中で、彼女のコメントだけが浮いていました。

クライスターズのファンには申し訳ないのですが、そういう事情もあって、彼女に対しては「思慮が足りない」というイメージを持ってしまった私ですが、このエグジビションの結果を聞いてやっぱり・・・しかし軽卒に決めつけるのはよくありません。エグジビションの様子を知りたくてテニスTVの録画を観てみました。

最初はエグジビションなのだからという感じで、二人はにこやかにプレーをしていましたが、GSチャンピオンのプライドもあり、クライスターズがガンガンと攻めてきました。真剣そのもの。全くブランクを感じさせないパワフルなプレー。

クライスターズは2−2でブレークされたものの、すぐにブレークバックして3−3へ。FHもBHも健在。しかもシグネチャーのスプリットスライディングでワイドに振られた球をカヴァーするなど、現役時代と変わらないダイナミックなプレーに驚きました。特にワイドに角度をつけて打つショートクロスが見事にサイドラインに決まります。

話はそれますが、リオのナダルの初戦を観ましたが、第1セットの前半はもう信じられないほどのエラーとショートボールの連発。「エッ!」「まさか!」口があんぐりと開いてしまうほどのpoorなプレーでしたので、ブランクがあるとあのナダルでも仕方がないのかと思ってしまったのですが、それにくらべてクライスターズは最初からハイピッチで、果てしなく現役に近いプレーをしていました。

優勝者のペトコヴィッチは疲れもあったのでしょうが、ブレークバックされてから、エラーが増え出し、二人は今までの笑顔が消えていました。

クライスターズのリターンが深く入り、ペトコヴィッチのプレッシャーが高まってきました。簡単なショットをペトコヴィッチがネットにかけるエラーでまたブレークされてしまい、クライスターズが5−3とリード。

さあ、これからペトコヴィッチがどのように挽回してくれるか、と期待していたところ、二人がネットで握手してしまったのです。エッ? 普通は第1セットまでプレーして終るのですが、ペトコヴィッチが「もう疲れているし、こんな真剣勝負はやってられないわ」と思ったのかどうか分かりませんが、彼女自身の希望で終ってしまいました。

録画を観たあとでも、何かすっきりとしない気持ちが残ってしまいました。

ペトコヴィッチは棄権で優勝してしまい、素直に喜べない気持ちだった上に、いくらエグジビションとは言え、敗れてしまえば優勝者の顔が立ちません。ドロップやロブなどで、ゲームを盛り上げることは簡単で、難しいショットの選択をすれば結構エラーとなってしまうもの。エグジビションなのですから、こういう気の効いた心遣いがクライスターズにあってもよかったかな、とも思ってしまったのでした。

いつも面白いペトコヴィッチ

怪我が絶えないペトコヴィッチで、今年はどのトーナメントも1回戦で敗退して調子が悪かったのですが、やっと優勝してくれて嬉しく思います。ユーモアたっぷりの彼女はトーナメントには欠かせません。

授賞スピーチで「初めてのアントワープでとてもエンジョイしています。」「でも長くいると太ってしまいそう。美味しいチョコレート。美味しいフレンチフライ。美味しいワッフルなどで、ヘルシーな食べ物がないんだもの。」

司会者が「Sorry。そうなんです。それが私たちの問題なんですよ。」と答えると、「許してあげるわ」とペトコヴィッチ。文字にすると生意気に聞こえますが、楽しいキャラクターで、しかも美しい彼女の口から出てくると、全く憎めず会場は笑いの渦に。

Well done!